中央チベット政権ペンパ・ツェリン主席大臣による特別講演会を開催――麗澤高等学校の生徒たちへのメッセージ
令和4年9月22日、中央チベット政権ペンパ・ツェリン主席大臣がご来園。麗澤高等学校の生徒たちを対象とした特別講演会を開催しました。講演テーマは「Tibetan International Context(国際情勢におけるチベット問題)」。廣池千九郎記念講堂で高校1年生と教職員約200名のほか、高校校舎でも生徒と教職員約120名がオンラインで視聴しました。
講演に先立ち、廣池幹堂・学校法人廣池学園理事長・モラロジー道徳教育財団理事長は、「2018年11月のダライ・ラマ法王14世のご来園に引き続き、特別なゲストとして、中央チベット政府の主席大臣をお迎えすることは本学園としても大変大きな名誉です。
チベットは長い歴史、伝統文化、宗教を持ち、優れたリーダのもと、平和で豊かな生活を送っていた国でしたが、現在、中国政府による弾圧を受け、チベットがどのような状況にあるのかを、ペンパ・ツェリン主席大臣より直接にお聞かせいただけます。
高校生諸君にとって、自由・独立・民主主義は当たり前のものではなく、尊いものだと理解できるでしょう。それらをどのように守っていくのかを考える良い機会ですので、しっかりと聴講していただきたい」と開催の趣旨を述べました。
壇上に立たれたツェリン主席大臣は、講演の機会を得たことに謝辞を述べられた後、チベットの地理や歴史について説明され、以下のように訴えられました。
「廣池理事長がおっしゃられたように、民主主義は当たり前にあるものではなく、明日、なくなってしまうかもしれません。
日本には、報道の自由、情報の自由がありますが、中国政府は、チベットの人たちにそうした自由を与えようとしません。チベット人のみならず、中国人に対しても同様です。それどころか、中国政府は偽った情報を世界全体に発信しています。
現在、中国政府は、チベットは中国のものであると主張して、私たちが大切にしてきた言語や宗教、文化や環境も破壊し、チベット人を中国人にするための教育を行っています。10数年後の未来には、チベットの子供たちは全員中国人になってしまうでしょう。
中国の指導者・習近平氏は常々、『一つの民族、一つの国家、一人の指導者』と言っています。多様性あふれる時代に、中国は世界の中国化を狙い、一つに統一しようとしているのです」
と、中国による弾圧の状況やその動きに対して警鐘を鳴らしました。
続いて、ツェリン主席大臣は、
「私は子供のころ、中国人に対して戦う気満々でしたが、ダライ・ラマ法王14世は、『攻撃してくる中国人を憎むな。中国人であっても人間である。批難されるべきは、間違った政策を打ち立て実行してきた指導者である』とおっしゃっています」
と述べた後、会場の高校生たちに向けて、
「皆さんが成長して中国に対峙するとき、相手が強大な存在だと感じても『とてもかなわない』などと諦めないようにしてください。日本が取引相手として中国を必要としている以上に、中国は日本を必要としていると感じています。
不当と感じた時には声を上げ、立ち上がって、ひるむことなく中国と対等に付き合っていくことが大事だと思います」
と力強いメッセージを送り、講演を結ばれました。
講演後、高校生から「国を守ることへの心構え」について質問されたツェリン主席大臣は、「今までにいろいろな質問を受けましたけど、もっとも難しい質問ですね」と前置きした後、
「中国はここ数十年で大国となり、周辺諸国に対して軍事力を見せつけています。こうしたことに対抗措置を取らなければ、中国は際限なく自己主張を繰り返してくるでしょう。
非暴力というポリシーを持って進むことは大事ですが、危機に瀕しときには戦う勇気も必要だと思います。そうでなければ、殲滅されます。
国防力を強化して攻撃のために武器を使うのではなく、相手の攻撃を止めるための抑止に使うとよいと思います」
と日本の事情を考慮してお答えされました。
高校生たちは日常触れることのない厳然たる国際情勢の現実に真剣に聴き入っていました。
講演後、改装を終えた麗澤大学の“学生食堂ひいらぎ”のテープカットセレモニーにはツェリン主席大臣にもご参加いただき、昼食を摂られた後、キャンパスをあとにされました。